美容室での順調な開業の中に潜む落とし穴!

第二話 順調な開業の中に潜む落とし穴!

融資が決定し、柳井幸喜は念願の自分の店舗である美容室be ambitious(ビーアンビシャス)を札幌でオープンさせた。15坪セット面2面シャンプー台1台で駐車場3台込みで家賃12万円。夫婦二人で頑張り、いつか人を入れて育てるぞ!と意気込んでいた。
 
 元々指名客の多い柳井は、開業前から予約が殺到し、オープン前日にはすでに月80名ほどの予約が入っていた。柳井は独立前の美園店や元町店で月間200~250名程のサロンワークをこなし鍛えられていた為仕事が早く、妊娠中の妻がアシスタントで居なくても一人で一日10名以上担当する日もあった。もちろん10時から20時までの営業時間はあって無い様なもので、繁忙日は時間外で予約取り8時から24時まですべてのお客様を一人でこなした。予定のない火曜日も定休日返上で働き、月の入客は150~160人を超える月もあった。

 オープンした3月は営業日が少ないにもかかわらず売上70万越え、その後は4月から12月まですべて80万越え、12月は一人で107万という売り上げを達成した。経費は夫婦二人なので30%と考えていた柳井は70%を取り分とした。そうすると80万売り上げた月で帳簿上は利益が56万だ。生活費30万としても26万貯金できる・・・・・・柳井は独立してよかったと心から思った。
 しかし、この頃の柳井には、こんなに利益あるのになぜか銀行口座の残高が思ったほど増えていかない落とし穴(キャッシュフロー)に気付かなかった(個人事業主なので店も自分の生活の口座も一緒にして事業主貸で処理していた)今はまだ口座残高に余裕がある・・・・・・気持ちは余裕があった。

 余裕があるため、柳井はお店に来る営業電話で良いと思えるものはどんどん導入した。24時間予約管理システム、LED電球全取り換え、5年リースの店外設置型電光掲示板広告、ホームページのSEO対策、ホームページ作成業者。そして、いいものを使うんだといろんなメーカーの薬剤にお金をかけた。パーマの質感向上のために、200vコンセントにする電気工事が必要だが最新型の蒸気発生マシンを導入した。

 すると、このころから新型蒸気マシンと旧式蒸気マシン、ドライヤ―を3台同時使用すると頻繁にブレーカーが落ちる現象が発生。電気の契約アンペアの見直しが必要となり電気代の負担が増えた。
 
 集客面では幸い顧客様だけで月に150人以上来ており、新規は月に10人以下で良いくらいである。業者に頼んでホームページ作ったしSEO対策も業者にやってもらってるし、集客サイトは当面考え無くても良かった。のちの落とし穴である・・・・・・
 
 12月を終え、開業2年目を迎えるころには、時間外営業で8時~22時や23時は当たり前になっていた柳井は、充実感を感じつつも食事やトイレ行く時間さえ惜しいぎゅうぎゅう詰めのサロンワークで、疲れ切っていた。
 酒好きの柳井のストレス解消は家に早く帰り休む事よりも酒である。
「今日は頑張ったご褒美だ!」と飲みに行く事が最も疲れを取る方法である。しかし、そのご褒美は忙しさが増すほどにどんどん増え
オープンして1年を過ぎるころには、ほぼ毎日飲みに行くという状態であった。

 そんななか、妻が10時から17時までの勤務で専従者で復帰し二人体制で営業することになった。
 人数こなせるようになったので時間外営業などの無理な予約の取り方はもうしなくて済んだ。
 だが、お客様をこなせるようになったのだが、1年目一人で無理しすぎて疲れたのもあり、夫婦で今の顧客様を月80~100万やってればいいか! と、このチャンスでも集客に力入れずにいた。
 
 このころ、入社希望の美容学校生が求人募集していないにも関わらず募集の問い合わせが来たのだが、開店当初の想いはどこへやら、柳井は「今、募集してないんですよ」と求人問い合わせを断った。

 夫婦二人でオープンの年は、3月から12月で817万、2年目は、1月から12月で1080万。
 この時の柳井は思いもしなかった・・・・・・順調に来ていたかに思われた美容室ビーアンビシャスが3年目に危機を迎える事になろうとは・・・・・・。