スパニスト学科試験本番&実技試験デトックス編!

第六話 ピンチの愛知スパニスト学科試験本番&実技試験デトックス編!

 問題用紙を見た柳井の背中に冷汗が流れる。  柳井の作った試験対策問題集は大事なワードを覚えるのには最適だった。 例えば、頭皮がAの場合、〇〇とは、〇〇と△△を摂ることによって□□すると良い。という問題が出た場合柳井の問題集は〇〇と△△と□□を瞬時に答えられるように作られていた。しかし、実際の試験問題はそうでなくもっと広い範囲でお客様にどうアドバイス出来るかを問うものだった。  「みんなすまん!」柳井は責任を感じながら問題に取り掛かる。 
 飛行機機内で自分の作った問題集や試験問題用のテキスト見るより、田中や大東のように別冊の資料も見るべきだったと後悔する。 だが、書く量が多いだけで落ち着いて問題に向き合えば、覚えた事と自分がサロンワークで説明する光景をリンクさせるとスラスラと回答が浮かんできた。 
 しかし、柳井には小学校の頃から直せない弱点がある。シンプルに答えだけ書けばいいものを、余計な関連知識等もついつい書きすぎてしまうことである。 (例えば、大平洋戦争で連合国から通知され、終戦のきっかけとなったのは? Aポツダム宣言 と書けばよいものを、柳井はこう書いてしまう。 
 Aポツダム宣言→もし受諾しなかった場合~九州上陸作戦のオリンピック作戦~関東上陸作戦のコロネット作戦~ノルマンディー上陸作戦以上の戦死者が~大本営は東京から~長野の松代へ~終戦の遅れからソ連が~日本は朝鮮半島のような分断国家に~北海道、東北は~共産主義国家に~)  このように、小学校のころから回答欄をはみ出してテストの裏まで余計なことを書き込むクセがある柳井は、一問に時間を取り過ぎて、試験管の学科試験残り時間を知らせる「あと10分です!」の声を聴いたとき、まだ1枚目を終えたとこだった。  焦った柳井は、急きょ2枚目3枚目に取り掛かかり、シンプルどころか書き足りないんじゃないかという状態でなんとか全問書き終えたが、1枚目だけ解答欄真っ黒で、2枚目3枚目は1行づつのスッカスカの状態で提出することになった。 

「ユキさんめっちゃ、すごい書き込んでましたね。凄いっす」馬場が言ってくる。 
「ま、ま、まあな。勉強したからな」などという強がりを言ったが心の中は「ヤベー落ちたかも」という言葉で一杯だった。 
  
 しかし次は得意の実技だ。気持ちを入れ替え柳井は実技に臨む。担当試験官はプチ社のスパニスト講師でスパ実技のスペシャリストの試験官だった。「よし!チャンスだ!」 

 「それでは実技試験を行います。時間は~」スタートだ! 
 ここで、左利き柳井の右脳フル活用実技が炸裂する。 
 右脳型は文章で覚えるのではなく脳内でスクリーンを思い描き映像で覚えるのだ!柳井の右脳の脳内スクリーンにスパ実技手順の映像が投影される。 

 1手順目ウォームアップ 
 半円を描くように頭を回す。手だけで回すのではなく肘を張り自分の体と試験官の頭で二重の半円を描くようにイメージし回す。ゆったりとゆっくり息を吐きながら回す。頭の中では柳井と試験官の二人を囲むように配置されたオーケストラが厳かにゆったりとしたテンポで戦場のメリークリスマスを奏で始める。 
  
 2手順目リンパの流れを促す 
 ピアニストのファーストタッチのように首という鍵盤に優しく指を置き耳後ろから首横付け根まで優しく押さえる。トゥルルルルーン♪トゥルルルル・トゥルルルルーン♪トゥートゥートゥ♪戦場のメリークリスマスの曲に合わせトゥートゥトゥーの所で鎖骨内側を(リンパ管から運ばれてきた老廃物を綺麗にするフィルターのリンパ節がある)ゆったり押す。 
  
 3手順目デコルテの毒素を流す 
 鎖骨上のラインをゆっくりと外側から内側へ押さえ、鎖骨下へ移動内側から外側へ押さえる。 
 これまでのすべての工程において柳井は常に試験官(サロンワークではお客様)の呼吸の動きを見ている。胸式呼吸の胸部の動きを観察し、息を吐いているときに合わせて押すのだ。この後の工程も同じ!手順をただやり、なんとなく押したりさすったりするのではなく相手の呼吸に合わせ、自らの手で相手の筋繊維の硬軟や弾力を感じつつ行うのだ。 
 その後、腕のつけ根リンパ節を円を描くようにゆっくりと押す。曲はE nergy Flowに変わる。  
   
 4手順目肩の筋繊維を解きほぐす  
 両手の金星丘(親指付け根のふくらみ)を肩に置き、ゆったりと平泳ぎのように外側に円を描くように圧をかける。次に月丘(手のひら小指付け根下の側面のふくらみ)を肩に置き首と肩の境目に向かってほぐし上げるように圧をかける。イメージはすしざんまいポーズの逆スロー再生だ。  

 5手順目肩を軽やかにたたく(チャンピ)  
 合掌のポーズで肩を左から右、右から左へと往復し血液循環を刺激する。肘を上げ手首も回し軽やかに合掌を振り下ろしやさしく叩く。ここのBGMは情熱大陸だ。  

 6手順目肩を大きくつかむ  
 首の付け根近くに手を置き大きく開いた手のひらで皮をつかみ老廃物を押し出す。そして腕の付け根から下へ向かって手のひらで圧をかけながら押し流す。  

 7手順目肩のコリを解きほぐす  
 左手を前頭部に当て、頭を少しだけ前に倒し右手の付け根で首の下から上に向かいプッシュアップし、次に首後ろから左の頭蓋骨の基底部に沿って耳まで円を描くようにやさしく撫でるように軽く圧をかける。その後右も同じく。最後に指先で首筋をやさしくほぐす。  

 8手順目頭皮の緊張をやわらげる  
 左手を前頭部に当て、親指と人差し指中指でVの字にした右手で頭蓋骨基底部を数か所ゆっくり押し込む。  
 柳井は脳内のBGM(エンヤのonly timeが流れている)に合わせ相手の呼吸に合わせ押す。いつもこの辺に来ると集中が途切れてくる。「焦るな! ゆっくりと呼吸を感じろ!」と思い直す。  
 同じ部分をさらに小さく円を描くように指の腹で回しほぐす。  
   
 9手順目早く小刻みにさする  
 左手を前頭部に当て、右手付け根で頭蓋骨の基底部に沿って左耳後ろから右耳後ろまでバイバイをするように素早く振りながら上下にジグザグとさする。イメージは小刻みにバイバイしながら頭蓋骨の基底部に沿ってW×2を描く様にさする感じだ。  

 10手順目頭皮を温める  
 9手順目と同様、左手を前頭部に当て右手の付け根を後頭部から頭頂に向かって速くさすっていく。頭全体をマッサージできるように5ライン繰り返す。  

 一連の流れを止まることなく、リズムが乱れることなくゆったりと出来た!   
 これで実技前半のデトックスは終わり、続いて後半のシロビャンカへと続く……「いいぞ!」確かな手ごたえを感じ柳井はシロビャンカ行程に入る。